工藝の道 (講談社学術文庫) | 拾書所

工藝の道 (講談社学術文庫)

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伊賀の種壺、朝鮮の飯鉢、下手物(げてもの)にこそ美が存する。宗教学者から民藝研究家に転じた柳宗悦は、工藝美を提唱、全く新しい美の世界を切り拓き、衆目を驚かせた。健康の美、無心の美、他力の美、恩寵の美。工藝は奉仕の道、工藝において衆生は救いの世界に入る。宗教的表現を鏤(ちりば)め、熱く明快に工藝美を語る本書は、人々に深い感銘と強い衝撃を与えた柳美学出発の書である。

民器こそは工藝の主要な領域である。人々はそれを「雑器」といい「下手物」と蔑んでいるが、……渋さの美を知りぬいていた初代の茶人たちは、貴重な彼らの茶器を雑器からのみ選んだではないか。古伊賀の水指は種壺でさえあった。あの茶碗は朝鮮の飯鉢であった。上手の華麗な美で、よく「渋さ」の域に達したものがあろうか。もとより雑器のみが工藝ではない。だが雑器において最も渋い最も自由な生命の美が冴えるのを、誰も否定することができぬ。

 

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