東京都中央区佃界隈は、私にとって原風景と言えるかもしれない。私は、生後10カ月間をそこで過ごした。もちろん、その時の記憶はまったくないが、生まれたばかりの私は両親に抱かれ、その街の風景を見ていたと思う。匂いや風を感じ、音を聞いていたに違いない。少し成長して両親から、その街に住む人々や当時の家族の生活についても聞かせてもらった。また少年時代のほんの一時期、再びそこで暮らしたことがある。佃は、私にとって縁のある街であり、今も時々そこを訪れる。