イラスト、版画、エッセイと多岐にわたり活動するアーティスト平澤まりこの、初の本格的な作品集。
広告、書籍、パッケージへのイラストレーションを多数手掛けてきた平澤まりこは、近年、「描版画」と名付けたモノタイプ手法による1点ものの版画制作や、陶作家の安藤雅信氏との共同制作による「陶彫画」など、版画工房の職人や陶作家と共に新たな表現に取り組む。
本書では、「朝」「まどろみ」「月夜」「夢」の4章で描版画74点を、そして立体作品である「陶彫画」7点を掲載。
平澤まりこの作品世界には、この世界に生きるものが、自然のもと、それぞれの生の時間に在ることの美しさを捉えようとするまなざしが見える。
プレス機の天板に置かれた透明なフィルム上のインクを布で拭き取ることで描き、1色1色重ねるごとに現れていく緩やかな丘、木漏れ日の差す森、そこに佇む神々しくも柔らかな姿の馬たちは、幻を写し取ろうとするように、無心に動かす作家の手の跡に現れていく。
神話的気配の空間に、自然と共に響き合い満たされる私たちの幸福の姿が見える、深い癒しが流れる一冊。
●日英(一部)併記
著/平澤まりこ
装丁/サイトヲヒデユキ